1616BBS 無料レンタル掲示板 空の下 父娘と鬼灯とカエルと白い花


鬼灯を買ってきました。

鬼灯の花は白い花。

幼き日、私の家には鬼灯が植えられていました。

 鬼灯は白い花なのに実を結ぶと、目にも鮮やかな赤になる。

その対比が不思議で不思議で…。

小さな私は、その美しさに怖ささえ感じました。

赤い鬼灯は綺麗だから、本当は手にしたいのだけど。

幼いながらにも、手にしてはイケないような気高さも感じられるから尚更。

だから、小さな私は鬼灯には1度も触れることは出来ませんでした。

 ある日のことです。

仕事から帰って来た父は小さな私をヒョイと抱き上げました。

父は赤く熟した鬼灯を口に含むと「大変だ、父ちゃん、カエルさんを食べちゃった」と言いました。

私は、驚いて父の口元をジィ~と見つめた。

確かに、父の口からは(キュッキュッ)と音が聞こえてくる。

小さな私は、父の腕に抱かれたまま、父の口の中に指を入れて父の口をこじ開けました。

口の中にはカエルは居なくて、赤い鬼灯の袋がペロンと入っていました。

、、、ホッとする私と。
、、、ガッカリする私。

父は夕陽に照らされニッコリ笑うと、おどけるようにキュッキュッと鬼灯を何度も鳴らしました。

 鳥が群れて西に飛んで行く。

気の早いお月さまが東の空にコッソリと顔を出していた。

父はキュッキュッキュッキュッと鬼灯を鳴らして…。

私は父の腕の中…。

私は父にダッコされている安堵感に満たされていました。

父と娘…紅く染まる夕陽の中で涼んでいる。

やがて、夕陽が山の端に静かにおちていきました。

 父の鬼灯笛がグエッと変な音をだした。

鬼灯笛の音が変わったことに気づいた私は父の顔を見つめました。

父は(破れちゃったから、お・し・ま・い)と言った。

「暗くなったから、お家に入るよ。お家で鳴らそうね。お前はどれがいい?」と父は鬼灯の前に屈んだ。

いつの間にか、鬼灯の葉っぱの上に小指の爪ほどの小さなカエルが乗っていました。

私は、カエルが乗っている葉っぱの横の鬼灯を指差しました。

それはまだ、青くてかたい小さな鬼灯。

父は「これは鳴らないよ、まだ小さいからね」と言って、(赤いのにしようか?)と言いました。

だけど私は艶やかな赤い鬼灯はちょっと怖くて、ヤッパリ青い小さな鬼灯を指差したのでした。

父が私が指差す鬼灯に手を伸ばすと、小指の爪ほどの小さなカエルは驚いたようにピョンと赤い鬼灯に飛び乗った。

そして、カエルは首を傾げて父と私をジィ~と見ていました。

父は小さなカエルを見て「お前みたいだ」と言って笑った。

 まるで、今日のことのように鮮明に覚えている或る日の夕暮れ。

父と娘の穏やかな時間。

 あの日から、私はカエルと鬼灯と白い小さな花が、、、好きなのです。

父35歳、私3歳。

父と私の、他愛無い小さな話。
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2017.07.22 Sat l 日記 l コメント (0) l top

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